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【コラム】育児時短就業とフレックスタイム制は両立できる?柔軟な働き方を実現するための措置等と育児時短就業給付金の計算式を社労士が解説
フレックスタイム制と育児時短勤務は両立できるのか――制度設計に悩む企業は少なくありません。特に本記事では、両制度を適切に併用するための労働時間の考え方と、育児時短就業給付金を受給するためのポイントを分かりやすく解説します。誤った運用は給付金不支給や労務トラブルを引き起こすため、ぜひご一読ください。
育児介護休業法の改正で義務化された「柔軟な働き方を実現するための措置等」とは?
2025年の育児介護休業法の改正施行により、企業は「柔軟な働き方を実現するための措置等」として、3歳から小学校就学前の子を育てる従業員を対象として、複数の選択肢から選べる育児期の労働者支援策を講じることが義務化されました。
企業が導入しなければならない措置には、以下の5つの選択肢が含まれており、企業はこの中から2つ以上の制度を導入し、従業員がそのうち1つを選択できるようにしなければなりません。
①始業時刻等の変更: フレックスタイム制、または、時差出勤制度の導入。
②短時間勤務制度(育児時短就業)の適用: 1日の所定労働時間を原則6時間などに短縮する措置。
③テレワーク(在宅勤務)等の実施: 一日の所定労働時間は変更せず、月に10日以上利用できるもの。
④新たな休暇の付与: 一日の所定労働時間を変更せず、年に10日以上取得できるもの。
⑤保育施設の設置・運営等: 保育施設の設置・運営、または、ベビーシッター等の手配および費用負担。
育児期の従業員が働きやすくなる環境を整えることが企業の内からだけでなく、社会全体からも求められています。例えば、先述した措置を複合的に取り入れることで働きやすい企業としてアピールでき、従業員のエンゲージメントの向上にも繋がるのではないでしょうか。
育児時短就業とフレックスタイム制は両立できる?総労働時間の算出の方法
前述したように、柔軟な働き方を実現するための措置を複合的に運営するうえで疑問に思われる方が多いのが、育児時短就業とフレックスタイム制の両立です。同じ時間に関する制度であっても、育児時短就業は「労働時間の長さ」を短縮するものであり、フレックスタイム制は「労働する時間帯」の決定を従業員に委ねる制度と、その目的が異なります。しかし、結論を申し上げますと併用は可能です。
労働基準法が規定するフレックスタイム制とは、一定期間(清算期間)における労働時間の総枠のみを定め、1日および1週間の労働時間については労働者に自由に決めさせるというものです。1日・1週間の所定労働時間という概念は撤廃されます。そこに、1日の所定労働時間制度を原則6時間とする短時間勤務制度を併用する場合、1日6時間という基準は労働時間の総枠に準用されます。この総枠を超えなければ、1日の実労働時間が6時間を超えても違法となりません。より、柔軟な働き方へと繋がります。
具体例を挙げます。本来のフルタイム契約が月160時間(8h×20日を基に算出)のフレックスタイム制が適用されている従業員が、育児時短就業を希望したとします。この場合、フレックスタイム制の仕組みは残したまま、1ヶ月の総労働時間を月120時間(6h×20日)等に引き下げる新たな雇用契約を締結することにより、従業員は日々の始業・終業時刻を自分でコントロールしながら短時間勤務を行うという理想的な両立が可能になります。逆に、契約上の総労働時間は月160時間のまま変更せず、単に日々の勤務を自己都合で早く切り上げ、足りない時間を「欠勤控除」として給与引きする運用では、所定労働時間を短縮したとは言えず、適切な育児時短就業とは見なされません。
したがって、育児時短就業とフレックスタイム制は両立するものの、総労働時間の短縮をしっかりと労働条件通知書や就業規則に明記して契約改定を行うことが求められます。
フレックスタイム制と育児時短就業を併用して「育児時短就業給付金」を受給するための計算式と注意点
フレックスタイム制と育児時短就業を併用して育児時短就業給付金を受給することは可能です。要件を正しく満たしていれば問題なく受給することができます。しかし、実務上の注意点として、通常の育児時短就業給付金とは異なる短縮時間の算定の仕方や添付書類が求められることになります。
まず、育児時短就業給付金の支給要件にある「1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間があること」を証明するために、労働時間の算出について考慮する必要があります。原則として、フレックスタイム制の計算式は下記の通りとなります。
【フレックスタイム制における週所定労働時間の計算式】
対象期間(清算期間)の総労働時間÷対象期間(清算期間)の月数×12月÷52週
※ただし、月の所定労働日数が変動する等、複合的に適用している制度によっては上記の式では正しく労働時間の算出ができていない場合がありますので、社労士やハローワークへ相談されることを推奨します。
厚生労働省ホームページに週所定労働時間の計算に用いる「週所定労働時間算定補助シー ト」を掲載していますのでご活用ください。
■厚生労働省公式: 週所定労働時間算定補助シート(Excel)
また、ハローワークへの給付金申請時には、対象期間の総労働時間を確認するために、該当期間の「タイムカード」や「出勤簿」の添付が必須となります。支給申請の際は、タイムカードと算定補助シート等を使って求めた「短時間勤務を証明する書類」をセットにして提出する必要があります。
育児時短就業とフレックスタイム制に関するよくあるQ&A
Q1. 自社のフレックスタイム制にはコアタイムがありますが、育児時短就業の従業員にもそのまま適用して大丈夫ですか?
A.コアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)が長い場合、総労働時間を短縮しても「子どもの送迎時間に間に合わない」といった不都合が生じ、育児時短就業の目的を果たせなくなる恐れがあります。コアタイムを短縮するか、あるいはコアタイムのない「フルフレックス制」を適用できるよう、就業規則や労使協定で個別の規定を設けることを推奨します。
Q2. 育児時短就業とフレックスタイム制を併用する場合、タイムカードの管理で特に注意すべき点はありますか?
A.給付金の申請時に「対象期間(清算期間)の総労働時間」を証明するため、該当期間のタイムカードのコピー提出が求められます 。日々の打刻漏れがないことはもちろん、契約上の短縮された総労働時間に対して、実際の総労働時間が大幅に超過していないかをチェックしてください。
F&Partnersの社労士からの提案
育児時短勤務とフレックスタイム制の併用は、制度上は可能でも、運用や就業規則の設計を誤ると給付金の不支給や労務リスクにつながる可能性があります。
・自社の制度設計が適切か確認したい
・給付金を確実に受給できる形に整えたい
・就業規則や労使協定を見直したい
当事務所では、制度設計から規定整備、申請実務まで一貫してサポートしています。自社のケースで適用可否を確認したい方は、お気軽にご相談ください。
