COLUMNコラム
【コラム】試用期間をめぐる法的性質とは?適切な運用と本採用拒否の注意点について社労士が解説
試用期間とは、本採用前に「試しに使用する」ことを可能にするもので、多くの企業で長期雇用を前提とした採用時に設定されています。この期間は、企業が教育や指導を通じて勤務態度や能力等を評価し、今後継続的に勤務する適性があるのか見極めることを目的としています。ただし、お試し期間とはいえ企業は自由に本採用を拒否できるわけではありません。
本コラムでは、試用期間の法的性質や注意点、運用方法を社労士の視点から解説します。
試用期間の法的性質
上述の通り、試用期間は社員を教育し、その者の適性を判断する期間です。その趣旨から判例上、試用期間中の雇用は「解約権留保付労働契約」であるとされており、通常の解雇よりも会社に広い裁量が認められていると言えます。しかし実務上は、本採用拒否も通常の解雇と同様に、客観的な理由や相当性を伴う対応が必要である点に注意が必要です。
試用期間中であっても安易な解雇は要注意
例えば、「なんとなく社風に合わない」といった抽象的な理由だけでは、法的な根拠として不十分です。本採用を見送る場合には、第三者が見ても納得できる客観的な証拠を積み上げることが不可欠です。具体例として、以下のケースは本採用拒否の根拠として重大要素と言えます。
・再三の指導にも関わらず、協調性や業務遂行能力が著しく欠如している
・頻繁に無断欠勤・遅刻が発生し勤務成績不良が見られる
・履歴書や職務経歴書に虚偽の記載があり、その虚偽が採用判断に重要な影響を与える
など
「14日以内」の特例とは
労働基準法第21条では、試用期間中の社員について、雇入れ後14日以内に限り、解雇予告を要せずに即時解雇することが認められています。ただし、これは予告義務の免除にとどまり、解雇自体が自由に認められるわけではありません。14日以内で本採用を見送る場合でも、合理的な理由と社会通念上の相当性が求められる点に変わりはなく、適切なプロセスを踏むことが必要です。
トラブルを防ぐ正しい評価と指導の記録
試用期間中の社員に対して期待した成果が得られないなど、ミスマッチを感じ始めた場合、評価基準を整理し、適切なプロセスに沿って改善を促すことが必要です。
客観的な評価基準の提示と面談の実施
本採用の可否を適切に判断するためには、まず「客観的な評価基準」を本人に示し、定期的なフィードバック面談を行うことが重要です。評価基準が不明確なまま能力不足を理
由に本採用を拒否すると、企業側の教育・指導の怠りがあるとして不当解雇を指摘されるリスクが高まるからです。
具体的な実務としては、以下のステップを推奨します。
①出勤率、業務習得度、コミュニケーション等の評価項目の提示
②定期的な面談を行い、本人に改善の機会を与える
③会社が求める水準と本人の現状の乖離を、記録を通して可視化
こうしたステップを踏むことで、評価の透明性が確保され、本人に改善の機会を十分に提供したことが明確になります。
問題社員への対応と教育指導記録の残し方
問題社員への対応においては、口頭での注意にとどめず必ず書面で通知し、記録を残すことが望ましいです。これは本採用を拒否する事態に至った際、会社側が十分な改善指導を尽くしたというプロセスを証明するための重要な証拠となるからです。
指導記録に残すことが望ましい項目は、以下の通りです。
•指導内容の記録: 日時、具体的な事象、指導内容、および今後の改善目標の明記
•共有の徹底: メールや業務日誌等を用いて指導内容を本人と共有し、認識の相違を防ぐ
試用期間中のトラブル対応では、綿密な経緯の記録が本採用拒否に至った正当性を裏付けるための重要な証拠になります。記録があれば、改善指導を適切に行ったこと、評価が客観的な基準に基づいていることを示すことができ、不当解雇リスクの低減につながります。
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